誰にでもできる登録商標の検索方法とは?J-PlatPatの使い方のポイント
登録商標があるかどうかは検索すれば分かります。登録商標は商標権で保護されているため、うっかり他人の登録商標を使用すると権利侵害でトラブルになる可能性もあります。そこで誰でも無料で使えるネットの検索データベースであるJ-PlatPatの使い方の説明と、検索方法を初めての方でも理解できるように分かりやすく説明します。ここで登録商標の検索方法が、はっきりと分かります。
- 特許情報データベースの使い方
- 簡易検索の方法とは?
- 本格的な調べ方
- 登録できるか判断する方法
- 類似群コードとは?
- 初心者にお奨めの検索方法
目次
- (1)登録商標検索に使うJ-PlatPatとは?
- (2)J-PlatPatを使った検索方法
- (3)J-PlatPatの簡易検索の方法
- (4)J-PlatPatで本格的に調べるには?
- (5)初心者にもできるおすすめの検索方法
- (6)商海外の登録商標を検索したい場合は?
- (7) 登録商標を検索する際の注意点
J-PlatPatは特許庁がインターネットで公開している最大級の無料の登録商標データベースです。専門家に限らず、誰でも無料で簡単に商標を検索することができます。
(1)登録商標検索に使うJ-PlatPatとは?
J-PlatPatとは?
特徴
特許庁が登録済みの商標をデータベース(以下、「DB」といいます)として公開しています。商標権が発生している登録商標以外にも、商標権が発生する前の登録出願中の商標も公開されます。
既に他人に同じ範囲の登録商標を取られている場合には、後から出願したとしても審査に合格することができません。このため先行登録商標を検索することにより、これから権利申請する商標が審査に合格できるかどうかの情報を得ることができます。
特許庁では誰でも出願前に検索できるようにしています。インターネットを使って特許庁の開いていない時間帯であっても無料で調べることが可能です。
J-PlatPatの特許情報プラットフォームの運営は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が実施しています。
DBの種類
登録商標情報だけではなく、産業財産権全般について無料で情報を得ることができます。
- 商標:出願中の商標や、登録済の商標を調べることができます
- 意匠:審査に合格した意匠権について調べることができます
- 特許・実用新案:特許については出願公開された全件と、登録済みの特許・実用新案を調べることができます
*注意点
権利申請された登録出願商標は、一週間から二週間程度で出願公開されます。ただし出願公開直後はJ-PlatPatにキーワード登録が完了していないため、検索しても何もヒットしません。
検索してJ-PlatPatに検索結果が表示されるようになるまでは登録出願商標が受理されてから1から2ヶ月程度が必要になります。
このため、登録商標の検索時点では、直近に出願された登録出願商標は発見できません。登録商標の検索の結果、似ている商標がなかったとしても、登録商標の取得手続が完全に済むまでは安心できません。
(2)J-PlatPatを使った検索方法
商標の検索の場合
グロールメニューをクリック
J-PlatPatの画面を開くと次のようになります。J-PlatPatは、「特許情報プラットフォーム」とのキーワードでインターネットの検索エンジンで検索すると簡単に見つけることができます。
J-PlatPatを開いたら、グローバルメニューの「®商標」にカーソル(マウスの矢印)を合わせます。そうすると各種検索のプルダウンメニューが降りてきます。
この商標関係のメニューから詳細で正確な登録商標の検索が可能になります。ただし、このメニューを使いこなすのは登録商標の専門的な知識が必要になります。
そこで初めに簡単に登録商標を検索する方法から紹介します。
画面中央のプルダウン(簡易検索)をクリック
J-PlatPatの画面中央に「特許・実用新案を探す」とのプルダウンメニューがあります。このプルダウンメニューから「商標を探す」のメニューを選択します。
この商標の簡易検索画面から、簡単に検索結果を表示させることができます。簡易検索画面は初心者でも使いやすいです。
自分が検討している商標を打ち込むだけで、類似商標を表示させてくれます。
(3)J-PlatPatの簡易検索の方法
登録商標の簡易検索のポイント
簡易検索のメリット
大体の目安が分かる
先行登録商標の簡易検索により、登録される可能性の有無や難易度が分かります。類似する商標の数が少ない場合には競争相手がなく比較的楽に登録できるかもしれません。
また逆に関連する商標が多い場合には、権利が密集しているということであり、後からの参入が難しいことが分かります。
さらに逆説的ですが、商品や役務の分野によっては審査が緩い分野があり、比較的似ていると思えるものでも並列して登録商標が存在する場合があります。このように審査が緩い分野では他の登録商標との違いを出せば、比較的簡単に登録することができることも分かります。
また簡易検索結果から、どのような言葉を選択すれば登録されやすいかも分かります。
登録商標作成のヒントが得られる
簡易検索の結果から、検索した商標と類似する商標を見て、商標の作り方を学ぶことができます。
検索結果の中にはアルファベットの大文字、小文字とか、カタカナ、ひらがな等の違いはあるかもしれませんが、商標は読み方が同じものは類似するものとして扱われますから、これらの違いは決定的な違いにはなりません。
反面、ある言葉の前後に違う言葉を組合せた場合には併存して登録商標が存在するなどのケースが見つかれば、別の組み合わせであれば審査に合格できることが分かる等、指針を得ることができます。
簡易検索のデメリット
簡易検索の結果は、必ずしもこちらの期待する結果が正確に表示されるとは限りません。
一例として、簡易検索で「ソニーミュージックエンタテインメント」で検索してみます。
すると簡易検索結果は「1件」と表示されます。後述しますが同社できちんと調べると本来なら200件以上の登録商標がヒットします。
正しく検索結果が表示されることが分かっているキーワードで検索しないと、こちらの期待する結果が返ってこない場合があります。
「株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント」の登録商標を検索する場合
手順の説明
プルダウンを「商標を探す」に設定して、入力バーに「株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント」と入力します。
入力バーの下の「検索」ボタンを押すことにより検索結果がでます。この検索により同社がどの程度の登録商標を保有しているか分かります。
すると簡易検索結果に「263件」と表示されます。
ヒット件数の横の「一覧表示」をクリックします。そうすると同社の保有する様々な商標がすでに登録されていることが分かります。
「株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント」が関係する登録商標の一覧が表示されます。この結果により、様々な商標がすでに登録されていることが分かります。
アルファベットだけのもの、アルファベットとカタカナとを組み合わせたもの、文字をデザイン化したもの等が登録されています。
表示される項目
項番
通し番号のことです。
登録番号
特許庁で設定登録手続がされるたびに順番に付与される7桁の通し番号のことです。この登録番号により、登録商標を特定することができます。
種類(下記の**は数字列を意味します)
登録**
これは登録番号です。「登録」の文字は審査に合格して登録されたことを意味します。この登録番号がついている場合には商標権が発生していることが分かります。
出願**
これは出願番号で、登録出願がされたときに付けられる番号です。「出願」の文字は、特許庁に権利申請の手続中であることを意味します。この出願番号がついている場合には登録商標はまだ得られていないことが分かります。
出願段階が終了して登録されると、上記の登録番号が新たに付けられます。
国際登録**
これは下記の国際条約であるマドリッドプロトコル経由の手続であることを示す番号です。
国際登録番号
マドプロと呼ばれるマドリッドプロトコル(世界一括で商標出願ができる制度)を利用した国際登録番号です。主に主に海外から日本に進出してくる企業のものが多く含まれます。
出願人
登録出願をした時の出願人の表記です。出願人に変更がなければ、審査合格後に出願人が商標権者になります。
出願日
登録出願の願書が特許庁に出願された日です。
イメージ
登録出願商標が画像で出願されている場合には、その画像が表示されます。
登録番号をクリックすると、クリックされた登録商標について詳細ページに移動します。
ここでチェックすべき項目は「存続期間満了日」です。
この「存続期間満了日」は商標権が満了する日を意味し、更新しなければ商標権は消滅します。
もし登録商標の検索の際に満了日が近い場合には、障害となる他社の登録商標がなくなる可能性もあります。
(4)J-PlatPatで本格的に調べるには?
「エヴァンゲリオン」との登録商標を検索する場合
手順の説明
- グローバルメニューの「®商標」にポインタ(マウスで動く矢印の先)を合わせます
- プルダウンメニューから「商標出願・登録情報」を選択します
- 検索画面に移動します
実際に登録商標を入力する際の3つの注意点
今回の場合に限らず、登録商標を調べる際には称呼(単純文字列検索)から調べるのがセオリーです。実務上は称呼が似ているかどうかが重要な判断基準になります。
称呼とは、商標の呼び方であり、対比する商標同士が類似するのかしないのかは称呼で問題になるケースが多いです。
前後に全角?をつける
「エヴァンゲリオン」だったか、「エバンゲリオン」だったか、または「エヴァンゲリオン」に正式にはプラスアルファの別の言葉がついていたかどうかあやふやな場合があると思います。
対象商標を間違いなく正確に入力できる場合は問題がありませんが、残念ながら実務上は調べる商標をどのように検索入力してよいか分かりにくい場合が多いです。
このような場合には、例えば「?エバ?」といった具合に、クエスチョンマークで単語をはさんで検索します。こうするとクエスチョンマークではされた前後に別のキーワードが付いている登録商標も合わせて表示されます。
ただし文字数が少ないと膨大な数がヒットしてしまいますので、この場合には順次文字数を増やします。
今回は「?エバン?」で検索してみます。そうすると、173件がヒットします。
一覧表示をクリックすると類似商標の一覧が表示されます。
「EVANGELION」とか「新世紀/EVANGELION/エヴァンゲリオン」等がヒットしていることが分かります。
登録番号をクリックすると、登録商標についてのさらに詳細な画面に遷移します。
ちなみに「?エヴァン?」で検索しても何もヒットしません。
登録商標の称呼というのは「表記された文字」ではなく、一般需要者がどのように読むのかを考えて決められるからです。このため検索の際には「エヴァゲリオン」ではなく、「エバンゲリオン」で調べる必要があります。
J-PlatPtに限らず、DBにはこのようなクセがありますので注意が必要です。
登録商標が得られるかどうかの判断基準
呼称・外観・観念
先行登録商標と、これから出願しようとする商標同士が似ているかどうかの判断は、それぞれの商標について呼称・外観・観念のいずれかが共通しているかどうかで判断されます。
称呼は読み方、外観は見た目、観念は意味合いです。
類似群コード・区分
登録商標に指定されている商品や役務についての類似群コードが詳細画面の最下部に表示されます。
類似群コードとは?
類似群コードとは、特許庁が審査時に使う、商品・サービスを分類したコードのことをいいます。特許庁では類似群コードを使って、ビジネスの種類を分け、効力の及ぶ範囲を定めています。
この類似群コードが異なれば、原則として互いに類似しないものとして扱われますので、類似した登録商標が先に登録されていたとしてもこちらの商標の登録の障害にはなりません。つまり、自社の業務と異なる分野であれば、登録商標を得られる可能性があるわけです。
【*注意事項】類似群コードが異なる場合でも互いに類似する商品・役務が存在します。例外的に互いに類似するものがどれかはJ-PlatPatからは分かりませんので注意が必要です。
区分とは?
区分とは、登録商標に使用する商品やサービスを、ニース協定の国際分類に従って区分けしたものです。区分は類似群コードの大分類に該当します。
よくある質問
【質問】『類似群コードのみチェックするだけではだめですか?』
区分が類似群コードの大区分に相当するなら、類似群コードのみをチェックすれば十分だと思いますが?
【答え】『類似群コードと区分の両方をチェックする必要があります』
その理由は、一部の類似群コードは、本来あるべき区分とは別の区分にあるからです。
先行登録商標の検索対象となる類似群コードが漏れ無く判明している場合はよいのですが、現在着目している類似群コード以外に存在する、関連の深い類似群コードがあることを見逃してしまう可能性が残るからです。
現状は、区分と類似群コードは入り乱れて配置されています。
商標法が施行された初期のころは区分と類似群コードは対応していましたが、これまでに数多くあった商標法の改正により、区分に属する商品や役務を国際基準の区分に合わせて変更を繰り返してきた結果です。
上述の通り、称呼が同じでも類似群コードや区分が異なれば、登録商標が得られる可能性があります。
この逆に、逆に呼称が異なっていても同じ類似群コードが付された商品や役務は、互いに類似していると考えられます。
なお区分表と類似群コードは、下記で調べることが出来ます。
ご覧いただければ、分かりますが、区分と類似群コードは、世の中にある全ての製品を分類したものです。非常に細かくなっており、初心者の方が自分の類似群コードを知るのは、とても困難です。
(5)初心者にもできるおすすめの検索方法
初心者にもできるおすすめの検索方法
審査に合格し、登録できる商標を探すためのおすすめの手順は次の通りです。
手順
- 簡易検索でなるべくヒット数の少ない言葉を考える
- 商標出願・登録情報で、称呼を検索
- 類似群コードと区分を調べ、競合がいないか確認
背景
やみくもに先行登録商標を調べても、目的とする結果になかなかたどり着くことができず、時間を浪費してしまいます。
その理由は商標登録の申請数の多さにあります。
日本の登録商標数は現在170万件以上に達します。また毎日400件前後の商標が登録出願されます。さらにこちらの商標の登録を妨げる商標は、同一のものだけでなく類似する称呼を持つものまで及びます。
J-PlatPatに格納されている先行登録商標の豊富さは、広辞苑等の辞典をはるかに超えています。検索するほとんどのケースで類似する先行登録商標がほぼ見つかります。
よくある質問
【質問】『区分表と類似群コードはどうやって調べればいいですか?』
【答え】『信頼できる弁理士に相談するのが時間の節約になります』
区分も類似群コードも膨大な量があり、一日で全てに目を通すのは大変です。
また仮に該当する区分も類似群コードが見つかったとしても、それ以外に取得しておくべき区分や類似群コードの関係がわかりにくく、初心者が調べるのが難しいです。それくらい非常に細かく分かれています。
区分や類似群コードを解説する書籍も販売されていますが、電話帳ほどの厚さがあることに加え、ほぼ毎年内容が更新されるため、最新の情報であるかどうかの検証も必要になります。
(6)海外の登録商標を検索したい場合は?
海外の登録商標の検索方法
注意点
弁理士や弁護士等の有資格者以外に、中間紹介業者や無資格業者が参入している場合があります。中間紹介業者の場合、安く業務を請ける無資格者に仕事を依頼すればするほど、中間のマージンを多く取ることができます。インターネットでは自己に都合のよい情報しか開示されていない場合がありますので注意してください。
また海外での商標検索は、国によって、費用も期間も異なります。海外の代理人費用と、日本の特許事務所の費用とがかかります。
海外の代理人に支払う商標検索の費用の例(一商標一区分が前提)
- 中国:約1〜3万円で5日間
- 台湾:約1〜3万円で5日間
- 韓国:約1〜7万円で二週間
- 米国:約5〜30万円で二週間
- 欧州:約50万円で1〜2週間(EU全加盟国)
*なお、専門家の解説なしの簡易調査の場合はこれより安く検索することが可能です。しかし結局は詳細な意見が必要になる場合が多いです。後から詳細調査を追加で依頼するなら簡易検索費用がまるまるムダになります。
逆に簡易検索のみで済ませ、海外の調査費用にお金をかけるのではなく、各国ごとに審査の進捗に従って対応を決めるというお客さまも多いです。
海外において権利を取得する場合には費用も権利を取得する国ごとに必要になります。海外の専門家の助言を得ながら手続を進めていくことが大切です。
事前の登録商標の簡易検索
上記の通り、海外の登録商標の検索費用には費用がかかります。現地代理人に依頼する前に各国のDBで検索が可能ですので、ここで無駄な依頼が発生しないように事前検討をすることもできます。
海外の登録商標検索DBの紹介
外国で登録商標を得るには原則として各国毎に手続をする必要があります。登録商標の検索も各国毎に行う必要があります。
- 米国:米国特許庁の商標検索システム
- 中国:中国商標局の商標検索システム
- 韓国:韓国特許庁の商標検索システム
- 台湾:台湾特許庁の商標検索システム
- 欧州:欧州共同体商標意匠庁の商標検索システム
海外のDB検索の注意点
日本の判断基準でなく、各国ごとの基準で判断する必要がある
海外DBでは、検索した結果、該当するものがなかった場合でも安心してはいけません。登録商標の効力は読み方以外に同じ意味のものにも及びますので、現地語で同じ意味を示すスラング等が隠れている場合があるからです。
各国の法制度の違いに注意
- 登録主義:日本等の多くの国が採用する、自国の特許庁に登録することにより商標権を発生させる制度
- 使用主義:米国等の一部の国に色濃く残る、商標の使用状態を保護して権利を発生させる制度
つまり、米国等の場合は登録商標のみを検索するだけでは万全とはいえない点に注意が必要です。特許庁のDB以外に商用DBも駆使して検索する必要があるため、一般に米国における検査費用は膨らむ傾向があります。
(7)登録商標を検索する際の注意点
登録商標を検索する際の注意点
検索の方法によって、目的とする対象がヒットしない場合がある
上記に説明した通り、「エヴァンゲリオン」で検索しても、何も検索結果にヒットしないです。これは「エヴァンゲリオン」が登録されていないということではなく、うまく検索できていない、ということです。「エヴァンゲリオン」等のキーワードを使うとうまくヒットします。
商標同士が類似するかどうかだけでは判断できない場合がある
商標同士が類似する場合には後から出願しても登録できませんが、商標同士が類似する場合でも、指定商品や指定役務に類似する重複部分が全くなければ、これは登録商標取得に向けた障害にはなりません。
このように、問題となる程度に商標同士が類似するかどうかは、
- 商標同士が類似するかどうか
- 指定商品・役務同士が類似するかどうか
との複数のファクターを判断する必要があることに注意してください。
実際に登録が認められている審査実務例を参考に考える
比べる商標が類似するかどうかは、称呼・外観・観念の三要素から判断されますが、一見類似するように考えられるのに、実務上は登録商標が併存している場合があります。
この逆に互いに近い登録商標が全く併存していない場合もあります。
互いに近い登録商標が併存している場合には比較的個々の登録商標の範囲を限定して密集併存していることが分かりますし、逆に併存している登録商標がない場合には、個々の登録商標の類似範囲が広く判断されていることが分かります。
このように実際に登録されている事例をご自身の業務分野で解析することにより、どのような商標なら登録されやすいのか、検討することができます。
なお、ファーイースト国際特許事務所では、今だけ無料で先行登録商標を検索するサービスを行っています。必要に応じてご使用ください。